【技術】楽にフォアドライブを打とう -強烈下回転は怖くない-
卓人の皆さんこんにちは。ムーです。
これまで練習の仕方や意識など紹介してきましたが、基本的な技術はあまり言及してきませんでした。
今日は皆さん恐らく最も拘りを持ち、意識的に練習を多くされているであろうドライブについてご紹介します。今日はフォア編にしたいと思います。
初級者の方は是非基礎として取り入れてみてください。
中級者の方は今より楽な打ち方になる方が多いと思います。その後のプレーをスムーズに行うためにも是非トライしてみてください。
まず、
初中級者の方に見られがちなドライブとはどのような特徴があるでしょう?
・体重を利き脚に深く掛け、インパクトと同時に逆の足に全重心を移動させる
・ラケットを斜め後方に下げ、バックスイングを取る
・ボールが頂点から落ちてきたところをインパクトする
・相手の下回転が強いとループドライブしか打てない、ボールがネットを越えない
・ドライブコースによって体を閉じたり開いたりするためコースが分かりやすい
当てはまる動作や特徴はありますか?
これらが全て悪いわけではありません。もちろんトップ選手にも重心を大きく移動させたり、腰よりも下げたバックスイングをしたり、頂点から落ちてきたところをインパクトするなどの打ち方をしている方はいます。
ただし意図的に使い分けができている点が上級者たる所以です。
そして"あるポイントだけは常に一定"である、このポイントが非常に大事です。
今日は
"下回転が強くても楽に"
"威力があり"
"コースが分かりにくく"
"カウンターをされにくい"
ドライブを打つ方法についてご紹介したいと思います。
まず2枚の写真をご紹介します。(世界の技 発行:卓球王国)
中国女子の一時代を築いた王楠選手のフォアハンドスピードドライブです。
※オリンピックにて合計5個のメダル(うち金4個)、世界選手権にて合計20個のメダル(うち金15個)獲得
女子卓球の特徴として台に張り付いて、ピッチが速いというものがありますが、現代において男子もこのような高速卓球化の流れにあります。
ヒントがありそうですね。
こちらもペンドラとして一時代を築いた韓国のキムテクス選手です。
※オリンピックにて合計2個のメダル、世界選手権にて合計10個のメダル獲得
当時最速で120km/hのドライブを打っていたとのことです。先日のTリーグで日本のトップ選手のスピードドライブが大体70km/hとのことだったのでその規格外なスピードに驚かされます。
この2枚の写真にあるヒントが隠されています。後ほどご説明します。
これからお話しする要素を実践して頂くと、トップ選手の打つドライブに近い形になると思います。
まずはドライブについてですがスピードドライブとループドライブに大きく分けられますね。スピードは前へ、ループは上へスイングする皆さんのイメージ通りだと思います。
よくお見受けする傾向として、ループドライブは得意だけど(安定感があるけど)スピードドライブがなかなか上手く打てない、またその逆も然りで、どちらかできるけどどちらかは安定しないという方が多い印象です。
これらの方々が持つ特徴としてループ系とスピード系を同じものとして考えてしまっていることが多いような気がします。
しかしドライブとはループもスピードも”上回転”をかける技術ですよね。
この上回転をかけるという点は同じです。しかし片方はできて、片方はできない、となってしまうのはなぜでしょうか。
これは”ドライブ=擦る”という概念に縛られすぎてしまっている方に見られがちな特徴です。
例えば卓球を始めたて、基本が出来てきた方に、バックスピンいわゆる下回転のボールを出すとします。ラケット面を立てて当てると、もちろんボールは真下へ落ちます。
これを相手のコートに入れる打ち方をしてもらうと回転をかけ直す、いわゆる擦って持ち上げる方(ほぼ10割)とラケット面を上に向けてボールの下から弾いて持ち上げる方がいます。
ここで多くの方は擦り上げるという選択をし、そのままドライブ=擦り上げるという認識が固定してしまいます。
すると上に擦り上げるためループ系のドライブは自然と打てるようになります。
しかし、今度前に飛ばすスピードドライブを打って貰うと、擦るイメージが強いがゆえ、ラケット面を寝かせたまま前に振ろうとします。
するとネットに引っ掛けます。
さらに回転に負けまいと大きくバックスイングを取り、
全体重をかけ、
ガチガチに力を込めパワーで前に飛ばそうとして、安定感のない状態になってしまいます。
これがスピードドライブが苦手な人の思考メカニズムです。
図で示すとこのような状態です。
では、どのような意識を持ち、どのようにスイングをすると楽に下回転を持ち上げることができるでしょう。
最も重要なポイントはループもスピードドライブもインパクトの瞬間は面を立て相手にフォア面が見える状態であること、瞬間的にボールを面で迎える、すなわちインパクトは同様ということです。これがトップ選手のドライブでループとスピードドライブに共通しているポイントの答えです。
実は上の絵において既にループドライブについてはその状態になっています。
ではスピードドライブでインパクト時に面を立てるとどうなりますか?
前に振らなければならないのですが。。。
再度絵でご説明します。
まず簡単にポイントだけ説明するとスピードドライブもインパクト時はラケット面を立て、打球と同時に面を被せる、ということです。
あれ?先ほど面を立てて当てると下に落ちると言ったじゃないか、と言われそうですよね。そうです、ここにカラクリがあります。
ここで再度、王楠選手、キムテクス選手のスイングを見て下さい。
王楠選手は体で隠れてこの写真では分かりませんが(動画等を見て頂けるとよく分かります)、キムテクス選手もバックスイング時に台より下にラケットを下げず、台と並行に引きラケット面が下を向いています。
この動作から始まるスイングと合わせて、ボールを捉える位置をあるポイントに決めてあげると強い下回転のボールに対して楽にスピードドライブが打てるようになります。
スイング、ボールを捉える位置についてそれぞれ説明します。
■スイングについて
先に答えを言うと、「8の字打法」「∞打法」という打ち方です。前者は日本卓球界のレジェンド高島規郎氏が提唱されている打法です。
※∞打法は私が勝手にそう言っており、8の字打法に影響されているのは言うまでもありません。
どのようなスイングか、再度絵で紹介します。
少し大げさに書きましたが、①→②の軌道はコンパクトに、③→④はしっかりとおでこまでしっかりスイングしてください。
「後ろ小さく、前大きく」です。
軌道を赤の実線で書きましたが、8や∞のような軌道となっていますよね。
これが8の字打法と言われる所以です。
このスイングのメリット
・ラケットを水平に引き、下から出すことでインパクト時に勝手に面が立ち、コンパクトなバックスイングで十分なインパクト量を確保できる
・インパクト後に面をかぶせることで上回転がかかる
・"擦る"ではなく"ラケットをかぶせながら前に出す"ことで打球が低く、威力が出る
・インパクト時に上に擦り上げれば同じスイングからループドライブも打てる
・体の構造に合わせた一連の流れでスムーズな動き、連打が可能
さらにコンパクトにするために、②から始めても構いません。
その場合はラケットを真下にバックスイングすることを意識すると良いです。斜めに引いてしまうと始めに紹介した、面をかぶせてそのまま擦りにいってしまいがちです。
ラケットを真下に下ろしてインパクトの強いスピードドライブ、ループドライブを打ち分けているのが最近で言うと馬龍選手や樊振東選手です。
ただし始めは①のように水平にラケットを引くと勝手に面が立ってくれるためこちらをお勧めします。
ラケットを引く際、面を寝かせたり、立てたままだったりなどはやりやすい方で良いと思います。
また、スイングの後ろに引く動作でボールのタイミングに合わせやすいというメリットもあります。
ボールに合わせてスイングする事が重要と以前よりお話ししてますが、自コートでバウンドするかしないかのタイミングでラケットを引き始めるとボールに逆らう事なく無理なく打球出来ます。
■ボールを捉える位置について
これは自コートでボールがバウンドして頂点が見える前が最もインパクト時に力を使わずに済みます。
以前もお話ししましたが、ボールはバウンド時が最もボールの回転が少なく、頂点過ぎたあたりで回転量が最大になります。
ですので相手の下回転量が少ない頂点前を捉えましょう。バウンド直後のライジングも大歓迎です。
また、ボール内の打球ポイントですが、下絵を参考にしてください。
横から見た絵になりますが、気持ちボールの下寄りを捉えるイメージが最も下回転に負けない領域になります。
何度も言いますがボールの上を捉えてしまうと下回転に負けない回転量のスイングが必要になりますので非常にパワーを使ってしまい非効率です。
自コートでのバウンドが頂点が低い場合などは、ボールの下に潜り込ませるよう自身の体勢を膝の屈伸を使って下げましょう。
この少し下側を捉えることは相手の下回転を使って前に飛ばすという点においても合理的です。
初級者で下回転を持ち上げる時に上に擦る派(ほぼ10割)とラケット面を上に向けて上に弾く派がいると話をしました。
後者をやってみてください。ラケット面に当たるだけで勝手にボールは相手コートめがけて飛んでいきます。
これは相手の下回転を使っているからです。
この原理を先ほどのスイングと合わせて使ってあげると、半分は相手の下回転の力でドライブが打ててしまうため、力をほとんど必要としません。
少し長くなりましたがここまでが下回転に対するドライブの基本打法です。
ここで少し道具の話を挟みますが、実はこの打法は硬いラバーの方がやりやすいという特徴があります。柔らかいとインパクト時の感触が伝わってこずにボワーンと勝手にボールが飛んで行ってしまうためです。
柔らかいラバーとは擦り打ちをするのに適した(インパクトが強くなくても食い込んでくれる)ラバーである反面威力が出にくいデメリットがあります。
この打法を習得し、もう一段階硬いラバーを使って威力のあるボールを打ってみませんか?
脱線しましたが、ここまで出来れば後はコースの振り分けは簡単です。
インパクト時にラケットヘッドを先に出すイメージだとクロスに、ヘッドを遅れて出してあげるイメージだとストレートに打てます。
インパクト時の動きだけで打ち分けるため相手はコースが非常に読みづらいです。
カウンターされる確率もグッと下がるはずです。
最後に始めに書いた初中級者のドライブの特徴を改造すると以下のようになります。
これを本日の伝えたいこととしたいと思います。
■本日の伝えたいこと
・体重を利き脚に深く掛け、インパクトと同時に逆の足に全重心を移動させる
→過度な重心移動は不要です。ボールの下側をインパクトするために必要程度体を下げ、起き上がるくらいの重心移動で十分です。
・ラケットを斜め後方に下げ、バックスイングを取る
→ラケットは水平に引いてコンパクトに下から出しインパクト時はラケット面を立てましょう。
・ボールが頂点から落ちてきたところをインパクトする
→最も相手の回転の影響の少ない頂点前、もしくはバウンド直後をインパクトしましょう。
・相手の下回転が強いとループドライブしか打てない、ボールがネットを越えない
→頂点前のボールを下からすくうイメージで、インパクト後は面をかぶせ、相手の回転を利用してドライブを打ちましょう。
・ドライブコースによって体を閉じたり開いたりするためコースが分かりやすい
→インパクト時にラケットヘッドを先に出す、もしくはヘッドを遅らせるかの使い分けでコース分けしましょう。
以上になります。
あまり聞き慣れない打ち方のように思えるかもしれませんが、実は海外のトップ選手(特に中国)が多く取り入れている打法です。
なぜあんなに力感無く楽にドライブが打てるのか不思議に思っていた方も多いのではないでしょうか。
威力をさらに上げるとなれば話は別ですが、強靭なフィジカルは必要ありません。
それよりもコンパクトなバックスイングから打点の早いスピードドライブで相手のタイミングを狂わせましょう。
カウンターも受けにくくきっと面白いほど楽にドライブが打てるようになりますよ。
少し分かりにくかったかもしれませんが、不明点などあればコメント下さい。
次はバックドライブについても書きたいと思います。
それでは本日も卓球ができる喜びをかみしめて。
ムー